物理療法の種類・リハビリでもおなじみの運動療法について

運動療法は、機能回復を目指すリハビリでもお馴染みの、物理療法の一つです。運動療法は、元々は腰痛や骨折、脳卒中などからの回復のために行われてきましたが、最近は高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を念頭に置いた予防と改善、循環器系のリハビリ目的に取り入れられています。この記事では、そんな運動療法について詳しくご紹介します。

物理療法の一つ、運動療法について

運動療法は、物理療法の一種で、機能回復を図るためのリハビリでもおなじみです。運動療法は、最近では糖尿病や高血圧、脂質異常症などに代表される生活習慣病を予防、改善するために、食事療法や薬物療法などと併用の形でよく利用されています。運動療法は、理学療法士が担当する治療としては、日常生活活動訓練と並んでメインとなるものです。運動により障害や疾患を防いだり、改善したりする目的で行う運動療法について詳しく見ていきましょう。

運動療法のメリットについて

運動療法についてご紹介する前に、運動療法がなぜ「良い」のか、そのメリットをご紹介しておきます。

筋力や関節可動域、そしてその協調性について改善、運動時の血圧上昇を抑制、糖の代謝改善、脂質の代謝改善、心機能の改善、肺活量アップ、最大酸素摂取量アップ等このように運動療法にはたくさんのメリットがあります。

運動療法の種類

運動療法は、ご紹介したように現在、幅広くリハビリや生活習慣病予防のために利用されていますが、大きく4種類に分けることができます。

・有酸素運動

筋肉を稼働させる源となる糖質や脂質と同時に、酸素も使って行う運動が、この有酸素運動です。有酸素運動については、健康志向の高まりもありますので、説明の必要はないかもしれませんが、一応、説明しておくと…有酸素運動は基本、ハードな運動ではなく、息が弾む程度の強度の運動が理想的。たとえば、サイクリングやジョギング、水泳、エアロビクス、ウォーキングなどが有酸素運動に該当します。血中コレステロールや血糖値を減らすことや血圧や血糖値の抑制と共に心肺機能を向上させます。

・無酸素運動

無酸素運動は、有酸素運動の逆、つまり酸素を使わずに行う運動です。強い負荷をかけて筋肉を動かすことが特徴で、有酸素運動と比較すると、短時間で多くのエネルギーを使うため乳酸が溜まり疲れやすいことが特徴。そのため、有酸素運動のようにじっくりと長い時間をかけるのではなく、短時間で行います。無酸素運動の代表格は腕立て伏せ、マシンやダンベルを使ったトレーニングなど、筋肉に繰り返し抵抗をかけるメニューです。

・ストレッチング

ストレッチングは、運動を行う前の、準備運動として行うことの多い、筋肉を柔軟にするための運動です。ストレッチングには、「動的ストレッチング」と「静的ストレッチング」の2種類があり、動的ストレッチングは筋肉を関節の動きに伴い伸縮させることを繰り返すストレッチング、そして静的ストレッチングは、筋肉を伸ばしてから静止した状態を保つストレッチングです。静的ストレッチングは体への負担が軽いので、運動を終えた後に行うクールダウンに最適です。静的ストレッチングには、心身をリラックスさせる効果もあります。

・筋力トレーニング

筋力トレーニングは、筋肉に力をつけるために行う運動です。筋力トレーニングには、関節を動かす「等張性運動」と、関節を動作させない「等尺性運動」の2種類に分かれます。等張性運動は、レジスタンス運動と呼ばれることもある運動で、筋肉に負荷をかけながら繰り返し行います。等尺性運動は、関節に負担をかけないので、病気療養明けで筋力が低下している方など、運動療法を始める人が最初に取り入れる運動として相応しいトレーニングです。

運動療法は楽しむことが大切

運動療法のメリットについてはすでに触れましたが、運動療法でもっとも大切なことは「楽しむこと」です。運動が苦手な人でも、友達や家族と毎日運動するのは楽しいものです。さまざまな楽しみ方がありますが、普通のスポーツ同様、「競い合うこと」「チームワーク」などと共に、実は「スポーツを観戦すること」も、喜びや感動といった気持ちがメンタル面に好影響を与えます。「参加すること」により運動を楽しみましょう。

生活習慣病予防のための物理療法「運動療法」

現在、多くの方が生活習慣病を予防する目的で運動療法を取り入れています。活発に体を動かしている人は、肥満、高血圧、糖尿病などにかかりにくく、総じて死亡率も低いとされています。

運動習慣を身につける

生活習慣による病気を予防するためには、運動する習慣を身につけることが大切です。生活習慣病を予防するためには、適切な運動を、適切な強度で行いましょう。日常生活の中で、毎日60分以上、「歩くこと」と同程度の強度の活動を行い、なおかつ、有酸素運動を毎日60分行うと効果的だと考えられています。

運動習慣を身につけるためには、いかに毎日の生活の中で「運動」するか、その意識が大切です。エレベーターは使わずに階段を使う、家事の際には意識して歩く、歩幅を少し広げて歩いてみる、など、少しの意識が違いを生みます。

ただ、いくら運動が効果的だとはいっても、すでになんらかの生活習慣病を患っている場合は事情が異なります。その場合は医師の指示を仰ぎましょう。

糖尿病患者のための運動療法

運動療法は、生活習慣病の予防や改善に効果的です。したがって運動療法は、糖尿病患者の方の健康維持についても良い効果が期待されます。たとえば運動することにより、脂肪酸やブドウ糖が使われるので血糖値が低下します。また、エネルギーの摂取と消費バランスが良くなるため、減量につなげることができます。運動することで血圧も下がりますので、心臓病になる確率も下がりますし、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らすという…運動療法には、ひじょうにたくさんの糖尿病に対するメリットがあるのです。

糖尿病患者の方のための運動療法は、具体的にはジョギングや水泳、エアロビクスなどの有酸素運動と、ウエイトトレーニングなどのレジスタンス運動が有効だとされています。有酸素運動は、1日あたり15分×2セットを週3回程度行うことが理想的です。

・注意点

糖尿病患者の方が運動療法を行う場合は、特に気をつけておきたいことがいくつかあります。糖尿病患者の方は脱水症状を起こしやすいので、運動前後、そして運動中の水分補給は欠かせません。また、糖尿病患者の方は、低血糖発作を起こしやすいので、こちらにも注意が必要です。疲労、震え、冷や汗、空腹などを極度に感じる場合は低血糖発作の可能性が考えられます。運動をする前に血糖値を測り、場合によっては少し食物を摂取してから運動するようにしましょう。

糖尿病患者の方が、糖尿病慢性期合併症を発症してしまった場合は、運動療法を制限することが望まれます。腎不全や心肺機能に起こる障害、糖尿病性の自律神経障害や壊疽(えそ)などの際は、運動療法は制限しましょう。

物理療法の一つ・運動療法で健康を保つ

物理療法の一つで、現在は生活習慣病の予防や改善のために多くの人が取り入れている運動療法。運動療法は、体力、筋力、柔軟性、心肺機能、そして身体のバランスを保つことを目的に行うものです。日常生活の中でもなるべく意識して体を動かすことは、立派な運動療法です。生活のクオリティを自らの意識により高めることで、健康な生活を送りましょう。